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ジェレミー・ハイツ(プロのフリースキーヤー、写真右)とサム・アンサマッテン(プロのフリースキーヤー、写真左)は、スキーの可能性の限界に挑戦し、進化させることで知られています。彼らが実行するスキーは別次元のものですが、人間関係やリスク評価、山での楽しい時間など、私たちも共感できる部分について2人に語ってもらいました。




ビッグマウンテンスキーでの競技と遠征を10年以上続けているジェレミー・ハイツとサム・アンサマッテンは、そのリスクや危険性についても熟知しています。

スイスの4,000メートル峰からパキスタンの6,000メートル峰まで滑走する画期的なプロジェクト「La Liste」。その中で彼らは 高山帯の厳しい積雪やペルーの人里離れた荒野での救助活動、そして『限界はどこにあるのか?』という普遍的な問いに直面しました。彼らがその旅の中で得た教訓や、ビッグマウンテンスキーのコミュニティにおけるリーダーの役割について話を聞きました。

現在のようなパートナーシップを築くまでに、どれくらいの時間がかかりましたか?

ジェレミー:かなり時間がかかったよ。私たちは12年一緒に滑っている中で、自然にこのような関係になっていったね。2010年頃に初めて大会に出場したときに出会って、その後2人ともフリーライド・ワールドツアーに参加して一緒に旅をした。2人ともスイス出身で......そして何よりも、“競技以外でもスキーをする”という同じ考えを持っていたことが大きかったね。それは一緒に何かを創り出す上で大いに役に立ったし、言うまでもなく彼は一緒にいて素晴らしい人間だしね。「La Liste」のアイデアを思いついたとき、彼は最適なパートナーだと思った。こんなことを一緒にできる人は滅多にいないよ。

サム:ジェレミーが言うように、本当に長い時間がかかるよ。私たちは多くのことを一緒に経験してきた、本当に2人で築き上げてきたパートナーシップなんだ。他の人たちと山にいるときは、たくさんの会話をする必要があるけど、ジェレミーとなら、お互いに顔を見合わせれば どんな決断を下すかわかるよ。自分を理解してくれて 自分の決断をサポートしてくれる人がいると、予測が難しいと言われる山々でさえ、ずっと簡単で楽しい遊び場になるんだ。これは本当に特別なことだよ。
お互いにラインどりやプロジェクトについての不安要素について、どのように話し合いますか?

サム:プロセスは非常にシンプル。気に入らないことがあれば、すぐにそれに対処する。遠回りせずに直接話すことで、本当にクールでオープンな会話環境が生まれるんだ。だから正しい決断ができるようになる。

ジェレミー:だからといって楽しいとは限らないけどね。例えば「La Liste」では、あるライン上で引き返す決断をしたんだけど、それは大きな決断だった。とても大きな目標だったから、引き返したら後悔しそうだった。でも振り返ってみると間違ってなかったと思うよ。その日の自分の状況を正確に見極めていたからね。とはいえ、若い人が同じ結論を出すのは難しかったと思う。私はその決断を下すための長年の経験を積み重ねてきたからね。時々、週末しか滑る時間がなかったらどうだっただろうと考えることがある。山で過ごす時間が私たちほど多くない場合、引き返すことを決断するのはより難しいだろう。私たちはスキーに来る機会が他の人よりも多い分、コンディションの改善を待つのは簡単だ。
山での主な危険の予兆や危険要因は何だと思いますか?

ジェレミー:人的要因が多いよね。

サム:お互いをよく知らないグループで、みんなが少し目立ちたがったりすると厄介だね。雪の予測が難しい場合、競争心に燃えていると雪崩の危険に気づけないかもしれない。スキーのプレイで自分を追い込むことに集中すると、大きなミスに気づかなくなることもある。

ジェレミー:それは撮影時には特に考えなければならないことだね、多くの人が関わっている場面では本当にバランスが大切なんだ。
撮影といえば、遠征や大規模なプロジェクトを計画するプロセスについて、もう少し詳しく教えてもらえますか?

ジェレミー:例えばスイスでの「La Liste」プロジェクトでは、滑りたい4,000メートル峰のコンディションをチェックするために何度も飛行機に乗って 空から滑りたい雪の層   をしっかりと確認したよ。滑走可能な時間帯はとても短いから適切なコンディションを確保する必要があったんだ。週末2日間でスキーに出かける人たちとは全く違うプロセスだけど、でもどんな人であれ、リゾートではない場所でスキーをするなら、事前に計画を立てる必要がある。どこを登り、どこを滑りたいのか......。成功させるため、実際に滑れるようにするために、使える全てのツールを最大限に活用しチェックしていく。大変な努力だけど、私たちはこういうスキーが本当に好きなんだ。だから競技をやめたのさ。まず家のPCの前で遠征の計画を立て始めて、それを実行に移し、最終的にミッションを成功させる......最高だよ!

サム:パキスタンでの「La Liste」では、5本のラインを滑るための計画に5カ月間費やしたけど、必要な時間だったと思う。

ジェレミー:サミー、それは言わないでくれ(笑)。

サム:でも本当だよ!それが大切なのさ。計画全体はランダムじゃ無いし、なんとなく「パキスタンに行こう」と言ったわけじゃない。ネパールやインドを検討して、決めるまで1年かかった。何が可能かを研究し調査するのに多くの時間を費やすんだ。
多くの人々は、2人が山で自信に満ち溢れていると思っているかもしれません。実際には、全てのプロジェクトで、リスクについてとても考えられているということに気がついていないのかもしれない。野心的でありながら、山での謙虚な姿勢を身につけるにはどうしたらいいと思いますか?

サム:謙虚であるということは 実際には、自分の決断を常に分析することだね。批判するのではなく、本当に自分が何をしているのかを見つめること。

ジェレミー:自分が何もコントロールできないと気づいたら、謙虚でなければならない。ただひたすらに、正しい決断をしないといけない。最高のスキーヤーで適切なスキルを持っていても、間違った決断をすれば何かが起こる。レベルに関係なく、視野が広くてアドバイスをくれる人たちが周りにいる事が大事だね。また、謙虚であるということは、毎回行くたびに何かが起こりうるということを意識することでもある。

プロとして危険なことのひとつは、限界に挑戦することに慣れてしまうことだね。心地よくなって、あまり注意を払わなくなることもある。例えば昨日、サムと私はアイスクライミングをしていた。危険なのは必ずしも登っているときではなく、懸垂下降するときなんだ。ロープワークを間違えればゲームオーバー。たとえ毎日のことであっても、気をつけなきゃならない。謙虚にならざるを得ないんだ。
そういえば、世界で最も伝説的なクライマーの一人であるリン・ヒルがロープを結び忘れたという話を思い出します。

プロにとって難しい課題のひとつは、自分の体験をいかに共有するかということです。若い世代をあまり怯えさせず、同時にこのスポーツの現実的な面を伝えることについて、どう思っていますか?


サム:次の世代に「やるな」とは言いたくないんだ。僕らも若い頃は同じことをやっていたからね。でも、安全に滑るための道具はできる限りすべて持って出かけるべきだ。私がフリーライディングを始めたとき、古い木製のシャベルしか持ってなくて、ビーコンもなかった......。

ジェレミー:ちょっと待ってよ、君いま何歳?

サム:今のフリーライディングのシーンでは、そんなのバカだって言うだろうけど。でも私たちはみんなどこかで始めたんだ。

ジェレミー:私も、自分たちがいつも完璧に安全な環境で滑ってきたという印象を与えたくないんだ。でも弟を見ると、ガイド教育やプロライダーとのコース滑走など、あの頃の私よりも多くのツールやリソースがある。私たちは正しい方向に進んでいると思うけど、雪崩の安全講習を若い世代にとって楽しく魅力的なものにするには、もっとやるべきことがあるね。
「Aspects Ep.01」の一環として、私はフォレスト・ショルデレにメディアが雪崩の安全性とフリーライドカルチャーに果たす役割について話しました。変化が起きていると感じますか?

ジェレミー:最近、真の意味で人を虜にするような、リアルで魅力的なスキーの映像作品を目にする機会はますます少なくなっているように感じるよ。まだ制作しているスタジオはいくつかあるけれどね。人々は本当に一緒にそこにいるような感覚を味わいたいし、パキスタンをどのように旅したのか、食事はどんなものだったのかを見たいんだ。私たちがここまでオープンであるべきか ということは、はじめは明確じゃ無かった。最初の「La Liste」が公開されたとき、私が転んでスキーを失うシーンがあったんだけど、それがとても好評だったんだ、親近感が湧くということでね。すべてが完璧にいくのを見るのは少しつまらない。たとえそれが不可能だったとしても、挑戦する人々を見るのは面白い。

サム:5年前だったら、別の考え方があったね。「La Liste:Everything or Nothing」でみられるような映像やストーリーの一部は使わなかっただろう。私自身、ガイドとして自分が滑ったラインがボトムに着いた後に雪崩れるのを見るのは......それは私の評判にとって良くない事かもしれないけど......だけど結局のところ、それが起こったのは事実なんだ。そして、それについて話すのはいいことだと思う。私たちのスキーのスタイルにインスパイアされた人たちがいることは知っている。ジェレミーと私は、スキーが簡単なものではないこと、もし何かが起これば、その結果は非常に大きなものになるってことを示すのが重要だと感じているよ。
2人が始めた頃から、安全性への取り組みに変化は感じられますか?

サム:フリーライディングは、装備とコミュニケーションによって本当に進化したよ。オフピステに行く人が増えている一方で、事故率は減っているよね。

ジェレミー:同感だね。このスポーツについて話す内容はとても変わってきた。素材が進化したからといって、より良いプローブやショベルを手に入れることが一番大事なことじゃない。問題は、その道具を使うということはすでに事故が起きてしまっているということだ。昔は、フリーライディングには見せびらかすようなカルチャーがあったんだけど、今では教育の重要性が認識されている。人々の意識も高くなっているから、私たちプロもどのようなイメージやアイデアを世に送り出すか、進歩するための努力をしているよ。今はフリーライダーが増えたけど、ビーコン、プローブ、ショベル、エアバッグを持っているか尋ねると、みんな持ってる。それはカルチャーやコミュニケーションのおかげだと思う。

数少ない貴重な週末を雪山で過ごす学生や会社員と、あなた方の生活は比較にならないかもしれません。その上で、旅行を計画したものの、いざ当日になってコンディションが最悪。という人がいた場合、何と声をかけますか?

サム:必ずしも「ノー」と言うべきかはわからないけど、私たちが助言するとしたらプランBを持つことだね。似たような場所で、より安全な環境で自分を試すことができる場所を探すこと。恐怖におののきながら、高山で限界に挑戦して一日を過ごしたくは無いでしょう。

ジェレミー:私も、悪天候や劣悪なコンディションへの対処が、他のスポーツに手を出すきっかけになった。パラグライダーを始めたんだ。だから、今はコンディションが良くないと思ったら、午後には飛んで下山してサイクリングに行ける。他のアクティビティがあればバランスが取れるし、固執しなくても良くなる。結局のところ、天候はコントロールできないからね。

スキーは大好きだけど、あなたたちのように頻繁に出かけることができない人へ、最後のアドバイスは?

ジェレミー:最終的にどうするか決めるのは自分。でも、他の人の視点を得ることで、自分の判断をより的確にすることができる。私は、ガイドやパトロールの人たちからのフィードバックやアドバイスによく耳を傾けているよ。もし、あなたがどこかへ旅行する場合、たとえそれが都会からであっても、その山に住んでいる人たちの意見を聞くことをためらわないことだね。

サム:自分が無理しなくていいときは青信号だ。逆にすべてがうまくいかないときは、こう言ってもいいのかもしれない「山はクールな日だったけれど、今日はのんびりしよう。」いい日はいずれ来る。グループの力量や雪崩情報、すべてが完璧に整った日が。本気でチャレンジし、美しい思い出を作るのに最適な日がね。

 
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