【DWR（耐水撥水）について】

もちろん防水性に優れた生地や膜は、激しい雨からあなたを守る重要な盾となります。しかし最前線で雨と戦うのは水を弾く性能、つまりDWR (耐久撥水)です。DWRとはギアの最も外側の層に塗布されているコーティングのことです。

DWRは、生地表面の水を玉状にして弾き落とし 生地自体への浸水を防いでくれます。これがなければ、生地が水を通さなくても、浸水した生地が体に張り付き 通気性が損なわれてしまいます。たとえ内側に薄いフィルムがあったとしても、濡れた服が肌に張り付くことがどれほど不快かを考えると撥水性はなくてはならない重要な役割です。

しかし、重要な役割である一方で、DWRは環境に悪影響を与えるという暗い側面を持っているのです。

【DWRが環境に与える影響】

殆どのDWRにはPFCというフッ素化合物が使われています。PFCは、焦げ付かないフライパンや食品の包装から、テントやアウトドア用品に至るまで、身近なものに使用されている化学物質の一種です。

PFCは撥水効果だけでなく油汚れにも強い物質ですが、人間の健康や自然界に悪影響を与えるため、近年では厳しい監視の対象となっています。 PFCベースのDWRを着用しても問題はありませんが、水や風を伝って蓄積された化学物質は自然界では分解されず、食物連鎖によって濃度を増します。実際にエベレストの地表から人間の血液に至るまで、PFCは検出されています。その使用を制限または禁止することは、とても重要な一歩である反面、今後それに変わる高性能な物質を生み出すという大きな課題を抱えています。

【より良い方法を見つけるために】

長い間、アウトドア業界で、DWRに使用されてきたPFCは、炭素構造の結びつきが強いC8系のフッ素化炭素を使用していました。C8系PFCは並外れた耐久性があり多くの製品に使われましたが、自然界では殆ど分解できない物質でした。世界中の政府が健康に害を与える物質として生産の禁止を推奨したため、近年では使用されなくなりました。

しかし、持続可能で耐久撥水に優れた代替品を見つけることは容易ではなく、マムートを含むアウトドアブランドの多くは、フッ素化合物を使用しない物質を模索しながら、その間を埋めるために炭素構造の結びつきの弱いC6系のPFCを採用しました。 C6系PFCは、撥水機能を発揮でき、副生成物を使用することで分解できるため、C8系よりは改善されたものの、長期的な解決策としては不十分でした。

マムートは2015年にC8系PFCの使用を完全に排除し、2016年にはC6系PFCの使用も排除する方向に舵を切りました。その結果、マムートのアパレル製品のPFCフリー率は、2022年夏には85%に達し、2024年夏には94%に達する予定です。そして2025年までにPFCフリー率を100%にすることを目標としています 。

その一方で、PFCが持つ性能基準を満たし、且つ自然環境にも優しい信頼性の高い物質の追求は今なお続いています。

【PFCフリーが意味するもの】

PFCフリーのタグは、自然に優しい撥水剤を使用した製品の証であり、ギア選びの基準となります。ただ、時間の経過とともに分解することを目的としているため、洗濯や摩耗 (例えば、日焼け止め、油、洗剤に触れさせること） に対しての耐久性が低いのが弱点です。ですので、撥水性を維持させるためには適切なケアが重要となります。PFCフリーのギアをずっと快適に使い続けるために、定期的な洗濯と摩耗により低下した撥水性を復活させることが大切です。撥水性の復活にはアウトドアショップなどで販売している環境に優しい撥水スプレーを選んでください。そんな少しの手間を掛けることには大きな価値があるのです。