
クライミングロープのケア
クライミングロープは、ただのギアではありません。壁の上で命を預ける、大切な装備です。
ロープを長く使い、何ピッチも登った後でも、手になじんで扱いやすい状態を保つためには、
正しいお手入れが欠かせません。このガイドでは、クライミングロープの正しい洗浄方法から乾燥、
保管方法まで、ステップごとにわかりやすく解説します。
PART 01.
ロープの寿命の判断基準は?
ロープ寿命の判断は、基準が分からなければとても難しいでしょう。ロープの見た目は変わらないのに損傷していることもあれば、経年劣化によりロープの寿命がくることもあります。最終的にロープを交換すべきかどうかを判断するのに役立つ、いくつかの簡単な手順とガイドラインをまとめました。
1.1 年数の目安
経験則を元に、使用頻度に基づいたロープの寿命と大まかな目安を下の表にまとめました。ロープの年数は、ロープの端に印刷されている製造年、または商品札にある製造年で確認できます。印刷はだんだん見え難くなるので、ロープ自体に購入日を書き写しておきましょう。
- 使用頻度
- おおよその耐久年数
- 未使用
- 1年に一度か二度
- 1か月に一度
- 1か月に数回
- 毎週
- ほぼ毎日
- 最大10年
- 7年まで
- 5年まで
- 3年まで
- 1年
- 1年未満
1.2 使用前に感触と視覚でロープを確認する
使用前には定期的にロープの確認をしましょう。ロープを手に取り、下記のような兆候がないかを感触と目視で探します。これが最善の方法です。
・明らかな切れ目
・ロープが分厚くなっている部分
・ロープが硬い、または柔らかく感じる部分
・変色した箇所
・ロープのさやが損傷し、ロープの芯が見える場所



いずれかの兆候がロープの中間部にある場合は、ロープの寿命と判断し使用を中止しましょう。損傷箇所がロープの末端やその周辺にある場合は、その部分を切断して使用することができます。これについては、パート2で詳しく説明します。
注:ロープの「けばだった」箇所は正常ですが、使用する毎に再確認してください。
1.3 抵抗および弾性テスト
ロープが正常に機能するかを確認するもう1つの方法は、ロープでループをつくり圧力をかける方法です。ループ部分が抵抗と「跳ね返り」を示している場合は、ロープが正常に機能していることを表しています。もしループがつぶれている場合は、構造が損傷しすぎているため安全に使用し続けることができないと判断します。
同じことが弾性と圧力についても言えます。ロープはバネのようなものであると想像してください。

一般的なルールとガイドライン
いくつかの一般的なルールも、ロープの状態を判断するのに役立ちます。
たとえば自動車のバッテリーの隣に保管されている場合に起こり得る、酸にさらされた状態は、ロープを交換する1つの理由になります。酸による損傷は目に見えないので、保管にはロープバッグを使用します。自動車のトランクなどで大きなバッテリーと接触した場合は新しいロープを使用することをお勧めします。
クライミング中に、落下率が1.0を下回っている場合は、ロープが危険にさらされている状態です。ロープは最大1.7落下率の5倍まで耐えられるように設計されテストされていますが、ロープが劣化したり、摩耗している場合は、耐えられない可能性があります。
最後に、岩場の鋭いエッジはロープを一瞬で破損させてしまうため大変危険です。懸垂下降でロープを使用する時には鋭いエッジを避け、抵抗を減らし、ロープがスムーズに作動するように、クイックドローを長くします。
PART 02.
ロープの切断方法
上記のように、ロープが損傷してもすぐに交換する必要があるとは限りません。損傷のあるロープを再び強力かつ安全に使用する方法は、ロープを切断することです。
2.1 損傷の確認/ロープのテスト
まず初めに、ロープを切断しても使用できるか、または交換するべきかを確認します。詳しくは「Part 1:ロープの寿命の判断基準は?」をご確認ください。その中ではいくつかのテスト方法を紹介しているので、ロープが修理できないほど損傷しているかどうかを確認することができます。前述した通りロープの中間では切断しないでください。中間部分に損傷がある場合は、ロープの使用を中止しましょう。
2.2 適切な道具を用意する
ステップ1の後、自信を持ってロープを切断するために以下のものを準備します。
・ロープ
・ヒートカッター/シャープナイフ
・テープ
・ライター
・油性ペン(Edding 3000)
ヒートカッターはクライミングジムなどで使わせてもらえる場合があります。それ以外の場合は、以下の手順に従ってください。
2.3 損傷箇所にテープを貼り切断する
切断したい領域にテープで印をつけます。ナイフで損傷した部分の側面をテープ内でできるだけきれい切断します。


2.4 芯とさやを溶解する
損傷箇所を取り除いた後、ライターを使って芯とさやを溶解させます。炎を切断箇所に数秒間当て、芯とさやが溶けて融合することを確認してください。

2.5 新しい中間点と長さを記載する
最後に、ロープを測定し、油性ペンを使用してロープの中間点に印をつけ、切断した場所のテープに新しい長さを記載します。ロープに損傷を与えず消えにくいことがテストされているEdding 3000ペンの使用をお勧めします。


PART 03.
なぜクライミングロープを洗う必要があるのか?
ジムでも岩場でも、ロープにはさまざまな汚れが付着します。砂や土、カラビナから発生する金属粉、皮脂、チョーク、松ヤニなど、挙げればきりがありません。
こうした汚れが蓄積すると、見た目が汚れてしまうだけでなく、ロープの手触りや操作性、安全性にも悪影響を与えます。きれいなロープは扱いやすく、ビレイデバイスの中でもスムーズに流れます。そのため、マルチピッチルートや長いルートでは特に大きなメリットとなります。
ケアのタイミング
ロープのクリーニングは、本当に必要なときだけ行ってください。目に見える汚れが付いている場合や、シース(外被)に砂や細かな粒子が入り込んでいる場合、あるいはしなやかさが失われてきたと感じたときなどが目安です。
講習会やプロジェクトなどで頻繁にクライミングをする場合は、数か月ごとに洗浄するとよいでしょう。一方、ジムクライミングが中心であれば、年に1回程度、または必要に応じて洗うだけでも十分です。
クライミングロープのケア方法
まずはロープを正しく洗うためのポイントを確認しておきましょう。手洗いでも洗濯機でも、どちらの場合にも役立ちます。
ロープの洗い方を詳しく解説した動画はこちら。
準備:汚れを落としながらロープの状態を確認する
洗う前に、まずは簡単な点検を行いましょう。ロープ全体をゆっくり手繰りながら手でなぞると、乾いた泥や粘着性のある樹液などの汚れを見つけやすくなります。
同時に、シースのずれや損傷なども確認しましょう。軽い汚れであれば、この段階で湿らせた布を使って拭き取ることができます。
洗濯機の場合
MAMMUTのクライミングロープは、洗濯機で洗うことができます。洗濯時は、以下のポイントを守りましょう。
・水温:30℃程度
・洗濯コース:ウールコースやデリケートコースを使用(脱水は400~600rpm程度の低速設定)
・洗剤:中性で環境負荷の少ない洗剤を使用。強力な洗剤や柔軟剤、漂白剤は使わない。

手洗いの場合
手洗いは、ロープへの負担を最も抑えられる方法です。清潔な浴槽や大きめの洗いおけにぬるま湯を張り、中性洗剤を少量入れます。
ロープを水の中で何度かゆっくりと動かしながら、手でやさしく汚れを落としていきましょう。砂や細かな汚れを無理にこすらず、丁寧に洗うのがポイントです。
洗浄後は、洗剤が残らないよう、きれいな水でしっかりすすいでください。
乾燥方法
洗浄後は、ロープを十分な時間をかけてしっかり乾燥させることが大切です。
・吊るして乾かさないロープの特定の箇所に負荷が集中する原因になります。
・ヒーターや直射日光は避ける紫外線や熱は、ロープの繊維を劣化させる原因になります。
・乾燥機は使用しない高温や強い回転によって、ロープを傷める恐れがあります。
最適な方法は、清潔なタオルやグランドシートの上にロープをゆったりと広げ、涼しく風通しの良い日陰で自然乾燥させることです。

ケアの頻度
洗う頻度は、ロープの使用頻度や使用環境によって大きく異なります。
| クライミング頻度 | 洗浄の目安 |
|---|---|
| ジムクライミングや、週1回程度の使用 | 6~12ヶ月ごと |
| 外岩クライミングや、週2~3回程度の使用 | 3~6ヶ月ごと |
| ガイド・インストラクターとして、または毎日使用 | 月1回 または必要に応じて |
ポイント:大切なのは、頻繁に洗うことよりも、適切なタイミングで正しい方法で洗うことです。迷ったときは、汚れた部分だけを洗浄してください。
保管方法
ロープをきれいに保つことは大切ですが、それだけでは十分ではありません。洗浄後の扱い方や保管方法も、ロープの寿命や性能維持に大きく影響します。
適切にケアし保管することで、何十回も登った後でもロープの信頼性を維持し、長く使い続けることができます。
・ロープバッグを使うロープバッグは、単に便利なアイテムではなく、ロープを汚れや紫外線、湿気、摩耗から守って長持ちさせるための重要な装備です。
MAMMUTのロープバッグには、ロープタープ(シート)が一体化したモデルもラインナップされています。持ち運びがしやすいだけでなく、岩場でロープを広げる際にも便利です。
・濡れたまま保管しないロープは、完全に乾いてクリーンな状態で保管しましょう。少しでも湿気が残っている場合は、ロープバッグを開けた状態にして、風通しの良い場所で保管してください。
保管場所についても基本ルールは同じです。車のトランクに長期間放置したり、ヒーターの近くに置いたり、湿気の多い地下室で保管したりするのは避けましょう。
・車内に放置しないクライミングロープは熱に弱く、特に高温環境には注意が必要です。夏場の車内は非常に高温になり、ロープにとって過酷な環境となります。
高温や急激な温度変化は、ロープの素材を劣化させる原因になるため、長時間車内に放置するのは避けましょう。
保管する際は、自宅の室内や風通しの良い収納スペースなど、温度変化の少ない場所がおすすめです。廊下や地下室、ガレージなどを利用する場合も、高温や湿気がこもらない環境を選びましょう。
・ロープのまとめ方適切な収納方法も、ロープを長持ちさせるための大切なポイントです。保管する際は、「バタフライコイル」と呼ばれる方法でまとめ、強い折れ癖が付かないようにしましょう。
バタフライコイルは、ロープをゆったりと束ねてコンパクトにまとめる方法です。絡みにくくなり、次に使用するときもスムーズに取り出すことができます。
また、この方法で保管することで、ロープ本来のしなやかさや形状を維持しやすくなります。

クリーンなロープが、
安全なクライミングにつながる
適切にメンテナンスされたクライミングロープは、手になじみやすく、ビレイデバイス内での動きもスムーズになります。
そして、ロープの寿命を延ばすことにもつながります。
正しい方法でケアを続ければ、MAMMUTのクライミングロープを長年にわたって良好なコンディションで使い続けることができます。
定期的な点検、丁寧なクリーニング、そして乾燥した環境での保管が、ロープケアの基本です。