専門家が教える正しいロープケア
あなたの命にも影響を及ぼす可能性のあるロープには、十分な注意と適切なケアが必要です。登攀の準備においてロープを徹底的にケアすることは、安心感とロープへの信頼にも繋がるためとても重要なことです。
ロープケアに関してのお問い合わせが多い質問を4つのセクションに分類して、私たちの専門家チームがお答えします。
Part 1:ロープの寿命の判断基準は?
Part 2:ロープの切断方法は?
Part 3:ロープの洗浄方法は?
Part 4:ロープの保管および取り扱い方法は?
項目をクリックし各セクションにジャンプするか、下にスクロールしてご覧ください。ご不明な点は、このページの最後の連絡先から専門家に問い合わせることができます。では始めましょう。
Part 1
ロープの寿命の判断基準は?
ロープ寿命の判断は、基準が分からなければとても難しいでしょう。ロープの見た目は変わらないのに損傷していることもあれば、経年劣化によりロープの寿命がくることもあります。最終的にロープを交換すべきかどうかを判断するのに役立つ、いくつかの簡単な手順とガイドラインをまとめました。
1.1 年数の目安
経験則を元に、使用頻度に基づいたロープの寿命と大まかな目安を下の表にまとめました。ロープの年数は、ロープの端に印刷されている製造年、または商品札にある製造年で確認できます。印刷はだんだん見え難くなるので、ロープ自体に購入日を書き写しておきましょう。
- 使用頻度
- おおよその耐久年数
- 未使用
- 1年に一度か二度
- 1か月に一度
- 1か月に数回
- 毎週
- ほぼ毎日
- 最大10年
- 7年まで
- 5年まで
- 3年まで
- 1年
- 1年未満
1.2 使用前に感触と視覚でロープを確認する
使用前には定期的にロープの確認をしましょう。ロープを手に取り、下記のような兆候がないかを感触と目視で探します。これが最善の方法です。
・明らかな切れ目
・ロープが分厚くなっている部分
・ロープが硬い、または柔らかく感じる部分
・変色した箇所
・ロープのさやが損傷し、ロープの芯が見える場所
いずれかの兆候がロープの中間部にある場合は、ロープの寿命と判断し使用を中止しましょう。損傷箇所がロープの末端やその周辺にある場合は、その部分を切断して使用することができます。これについては、パート2で詳しく説明します。
注:ロープの「けばだった」箇所は正常ですが、使用する毎に再確認してください。
1.3 抵抗および弾性テスト
ロープが正常に機能するかを確認するもう1つの方法は、ロープでループをつくり圧力をかける方法です。ループ部分が抵抗と「跳ね返り」を示している場合は、ロープが正常に機能していることを表しています。もしループがつぶれている場合は、構造が損傷しすぎているため安全に使用し続けることができないと判断します。
同じことが弾性と圧力についても言えます。ロープはバネのようなものであると想像してください。
一般的なルールとガイドライン
いくつかの一般的なルールも、ロープの状態を判断するのに役立ちます。
たとえば自動車のバッテリーの隣に保管されている場合に起こり得る、酸にさらされた状態は、ロープを交換する1つの理由になります。酸による損傷は目に見えないので、保管にはロープバッグを使用します。自動車のトランクなどで大きなバッテリーと接触した場合は新しいロープを使用することをお勧めします。
クライミング中に、落下率が1.0を下回っている場合は、ロープが危険にさらされている状態です。ロープは最大1.7落下率の5倍まで耐えられるように設計されテストされていますが、ロープが劣化したり、摩耗している場合は、耐えられない可能性があります。
最後に、岩場の鋭いエッジはロープを一瞬で破損させてしまうため大変危険です。懸垂下降でロープを使用する時には鋭いエッジを避け、抵抗を減らし、ロープがスムーズに作動するように、クイックドローを長くします。
Part 2
ロープの切断方法
上記のように、ロープが損傷してもすぐに交換する必要があるとは限りません。損傷のあるロープを再び強力かつ安全に使用する方法は、ロープを切断することです。
2.1 損傷の確認/ロープのテスト
まず初めに、ロープを切断しても使用できるか、または交換するべきかを確認します。詳しくは「Part 1:ロープの寿命の判断基準は?」をご確認ください。その中ではいくつかのテスト方法を紹介しているので、ロープが修理できないほど損傷しているかどうかを確認することができます。前述した通りロープの中間では切断しないでください。中間部分に損傷がある場合は、ロープの使用を中止しましょう。
2.2 適切な道具を用意する
ステップ1の後、自信を持ってロープを切断するために以下のものを準備します。
・ロープ
・ヒートカッター/シャープナイフ
・テープ
・ライター
・油性ペン(Edding 3000)
ヒートカッターはクライミングジムなどで使わせてもらえる場合があります。それ以外の場合は、以下の手順に従ってください。
2.3 損傷箇所にテープを貼り切断する
切断したい領域にテープで印をつけます。ナイフで損傷した部分の側面をテープ内でできるだけきれい切断します。
2.4 芯とさやを溶解する
損傷箇所を取り除いた後、ライターを使って芯とさやを溶解させます。炎を切断箇所に数秒間当て、芯とさやが溶けて融合することを確認してください。
2.5 新しい中間点と長さを記載する
最後に、ロープを測定し、油性ペンを使用してロープの中間点に印をつけ、切断した場所のテープに新しい長さを記載します。ロープに損傷を与えず消えにくいことがテストされているEdding 3000ペンの使用をお勧めします。
Part 3
ロープの洗浄方法
清潔なロープを使用すると、ロープの寿命が長くなり、機能が向上するだけでなく、感触、見た目、使いやすさも向上します。ロープは洗濯機で洗えるのでお手入れも簡単です。
3.1 最初にロープを手できれいにする
ロープを洗濯機に入れる前に、まずは手で乾いた汚れや草などをこすり落としてください。このひと手間が洗濯機の破損を防ぐことにもつながります。
3.2 洗濯機に入れる
次に中性洗剤(環境にやさしいものをお勧めします)を使用してロープを洗濯します。「ウールプログラム」で、水温30℃に設定します。
注:ロープは浴槽や流しで手洗いすることもできますが、洗濯機で洗う方が簡単で完璧です。
3.3 風通しの良い場所で乾燥させる
洗濯後は、風通しの良い場所で置き干しします。ロープの弾性に影響を与える可能性があるため、ロープを掛けて干したり、直射日光や暖房機器の上に置いたり、タンブル乾燥は絶対に避けてください。タオルやタープの上にロープを置き自然乾燥させるのが最適です。次に適切な保管方法を紹介します。
Part 4
ロープの保管と取り扱い方法
ロープは冒険家や職人のものでない限り長時間保管された状態で過ごします。ロープを保管するための重要なポイントを覚えておくことで、ロープをより長持ちさせることができます。
ロープバッグを使う
化学物質や湿気、切断や損傷からロープを保護するため、ロープは常にロープバッグに入れて保管しましょう。
乾燥した状態でロープを保管する
ロープを保管する上で2番目に大切なことは、ロープを乾燥した状態で保管するということです。濡れている場合は、ロープが乾燥するまで換気できるようロープバッグを開いた状態にし、涼しい場所でバッグごと保管しましょう。
決して車内で保管しない
ロープバッグを車内に入れっぱなしにしておくことは、頻繁にクライミングに出かける人が犯しがちな大きな間違いです。スペアカーバッテリー(酸の詳細については、パート1を参照)に接触する可能性があることに加え、車内は場所により温度差が激しくロープを保管する場所としては不適切です。年間を通じて気温が安定しているガレージや洗面所で保管しましょう。
注:毎回ロープを車から運び出すことを習慣にしてください。
クライミング時や準備する時にタープを使う
最後に、ロープを野外で使用する際は、必ずタープを地面に敷いてロープを置きましょう。摩擦や裂傷の原因となる恐れのある汚れや小枝などが付着することを防ぐことができます。これらの小さな要素は時間の経過とともに大きな影響を与える可能性があるため、クライミングを始める前にスペースを確保しましょう。
これらのロープガイドに従うことで、
最大限のパフォーマンスを発揮するだけでなく、
より長く使用できることができます。
ロープという重要なギアのために
時間と労力を費やすことは大いに価値があります。
装備のベストケアについてのご質問は、こちらから私たちの専門家にお問い合わせください。